右の側頭部が痛んでもうすぐ七十時間になる。
いつもより早めに帰宅してにんじんを乱切りに、玉葱を薄切りにしてオリーブオイルで軽く炒め、少量の水とコンソメスープの素を入れて蒸し煮にする。水と賞味期限ぎりぎりの牛乳を加えてフードプロセッサにかける。鍋に戻してあたためる。きゃべつとにんじんを小さく刻んで薄い塩で揉んで少しだけ置いて水洗いして絞る。スイートコーンの缶をあけて加え、小さいマヨネーズの封を切って黒胡椒を挽いて和える。サラダもスープもずいぶんとたくさんあるように見える。それぞれをてのひらにおさまる鉢に盛り残りを冷蔵庫に仕舞う。何をしているんだろうと思う。明日明後日と出張でその次の日には鍋の約束があるのに私はいつこんなものを食べる気でいるのだろうと思う。
サラダを噛むとこめかみに響く。動くと耳の奥から鼻梁にそれが流れる。断続的に続いているのではない。ずっと続いている。夢もうつつもずっと、少し、痛い。
頭の右側に悪いかたまりがあるところを想像する。それから腫瘍のある人々からの非難を想像する。Googleに偏頭痛について質問する。首を傾ける。二十歳のころから「いつか頭がもげる」と言われつづけた音が今日はことのほか大きい。頭がもげるところを想像する。頭がもげた人からの非難を想像する。うっかり首を曲げてごとりとそれが落ちてしまった人々について。
がまんできる程度の痛みなので腰痛用のロキソニンは服んでいない。腰痛はつらい。私の腰椎はときどきずれる。あれはとても痛い。椎間板ヘルニアが狼なら今の頭痛は白くってふわふわした毛足の長い子猫ちゃんだ。
病院に行こうかと思わないのではなかった。でも休みをとるのが少しいやだった。ただでさえ先週から外食の一人前がうまいことおさまらなくて同僚との昼食を断っている。減量中なんですよおと言い続けるのは少しいやだ。頭が痛いというのはもっといやだ。人に変に思われる。
でもそれも少しだけだ。すごくいやなのではない。少しいやだ。少し痛い。とても痛いのではない。
痛いよ、キティちゃん。
サラダとスープは明日の朝と明明後日の朝できっとみんななくなるだろう。たいした量ではない。